「フラグ発動か…と思わせておいて、肉を切らせて骨を断つ! これ戦術、奇計の要なり、だ」
「バカなんですか。捨て身…ってことですよ」
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、ってな」
「死にたい人間を…身を捨てて救う意味がない」
「死なせたくない人間を守るのが、俺の仕事だ。誰かが死にたいかどうかなんて時と場合でコロコロ変わるんだよ。それに俺は死なねーよ」

 どこまでもどこまでもなぜこのひとはへこたれない? なにがこのひとからあきらめるというがいねんをとりのぞいたの?

「俺は今後とも、永遠に、岡本と楽しく飯食うんだ。おまえのブサ可愛いツンデレ発言をオカズにな」
「僕は…食べたいものなんか…ない…」
「それでも一緒にいてくれ。それで十分だ」

 フラグフラグフラグフラグ…どこまで行っても死亡フラグしかない僕とあなた。それでもそこに切り込んで行こうというの?

「ああ、もうイキそーだ…もっと挿れていたいのに! 早すぎだろ、俺」
「うくっ…くぁ!」

 急に動きが激しくなった。熱さと違和感と性感のうねりが下腹部の中で膨れ上がる。朦朧とした意識の中でなにもかも投げ出してしまいたくなる。義務も、責任も、安全も、決意も、だれかとのつながりも人生もなにもかも。

 死も…?

「うあ…イクっ!」
「はうぅ!」

 一度出したのに、なぜか僕も幸村さんと同時に出していた。

「また…イッたな…」

 僕のからだの上で、幸村さんが荒い息をつきながら笑う。

「…おも…い」
「いいだろ? 重さがさ」
「良いのは…息がしづらい…ことですか…ね…」
「いや、それはマズい」

 慌てて僕の上からどいた幸村さんは、余韻もそこそこに、ほれ、というとまた僕を引っ張り起こして風呂場に連れて行った。2回めの繰り返しの後は、僕も幸村さんも爆睡だった。

 土曜日の朝方ということをまたすっかり忘れていた僕は、慌てた上に時計まで見間違え、いきなり飛び起きたところを幸村さんにまた笑われた。

「おいおい、休日くらいゆっくりしようぜ。俺、珍しく土曜返上免れてんだから」
「ああ…まぁ…ええ」
「なに、その嫌そうな返事」
「死体と一緒に居るほうがリラックスできるんですが…」
「えー? 俺は最近岡本率低すぎて疲弊してるんだけど」
「ですから、なんですかその迷惑な数値」
「だって…岡本には悪いけど最近司法解剖…しかも自殺の遺体減ってるのわかってるだろ? 優秀すぎるんだよなぁ、あの清水っていうドクター。俺にとっては迷惑つーか…いやいや、それを言っちゃダメなんだけどさ…」

 期せずして幸村さんの口から例のDr.清水の話が出た。