僕を止めてください 【小説】





「違います。僕は松田さんとは噛み合い過ぎたんです。でも松田さんは犯罪者になりたくなかったから、僕も松田さんを犯罪者にしたくなかったんです。だけど僕は死の世界から僕を引きずりだした松田さんを恨んでます。殺すために生き返らせたなんて、酷すぎます。それで小島さんに迷惑かけて…すみません」
(じゃあ、俺のほうがお前のことわかってるよな。俺はお前を引きずり出したりしねーよ。お前を屍体のまま抱いてやる。お前は生き返んなくていいから。戻ったってお前は俺から離れらんなくなるんだぜ?)
「そうですか?」

 なんだか詭弁に巻き込まれてる気がした。でも、ゾクゾクが続いている。

「松田さんとあんまり変わらない気がしますけど」
(そうか? 会って抱かれたらわかるけどな。迎えに行ってやるからまた日曜日、会おうぜ)
「……」

 僕は迷った。死とゾクゾクとを秤にかけている。そんな自分にも戸惑った。まだ佳彦の呪いが解けていないのか? 僕は黙ったまま答えなかった。小島さんは畳み掛けてきた。

(お前と俺のどっちが正しいかわかるぜ。会えばな。考えても答えは出ねぇだろ? 抱かれて感じなきゃもう会わなきゃいいじゃん)
「誰でも感じるのは小島さんもわかってるんでしょ」

 小島さんはまた不敵に笑った。

(まぁ、俺がそれでもいいかってことも知りてぇしな。うん、そうだな。それだわ。俺も自分を試したいわ。やっぱ迎えに行くから、日曜、空けとけよ)
「あ、ええ……まぁ…」
(じゃあな)

 そう言うと電話は切られた。また約束が出来てしまった。はっきり言って乗り気じゃない。またあの焦燥の中で気が狂うのかどうか不安だ。だが、母親の例の魔法がそのあとも効くのか、ちょっと試してみたくなった。全部ダメなら僕はしっかりと、確実に死ぬ計画を立てるまでの話だった。