僕を止めてください 【小説】




 僕はこの前の“死ねば?”の会話の続きを話していた。

「えっと、小島さんなら僕を“屍体だ”って言ってくれると思って」
(それでかよ)
「そう言って抱いて欲しいかもって思って」
(あ…そう。俺に?)
「はい」
(誰でもいいんだろ?)
「わかりません。でも“殺したい”って言ってくれるから」
(気持ちよかったのか?)
「はい。ただ絞め落とされるより、ずっと感じます」
(ふぅん…なんだかねぇ…じゃあ、今から抱かれに来るか?)
「いえ、もう気が狂いそうなのは終わったんです。母親に見つかって気が紛れました。僕また死んでた時に戻れましたから」
(なんだよ…もういいってか。あっさり言うよな、バカにしてんのか)
「いえ、もうご迷惑かけないで済みます。この前は夜中に電話してすみませんでした」

 すると小島さんはまた唸った。前にもこんな風に唸った気がした。

(戻って済むのかよ、お前が)
「え? なんでですか?」

 僕は意表を突かれて思わず理由を尋ねた。小島さんは楽しそうに笑いながら言った。

(ククク…淫乱だからな、裕は。どうせまた落とされたらイクんだろ? そんときは俺がリクエストどおり耳に口つけて囁いてやるよ。殺してやるってな)

 受話器にそう囁かれた瞬間、ゾクッと背筋に痺れが走った。

(何度でもそうやってお前に摺りこんでやるよ。松田はお前のこと実はよくわかんなかっただけだろ。俺は違うぜ。お前のツボをきっちり押さえて狂わせてやれる。お前から松田に電話したりしたか? しねぇだろ? お前は俺に電話してきたんだよ。忘れらんなかったんだろ。俺のことがさ)

 なんか怒ってるのはわかった。なぜみんなこんな怒りっぽいんだろうか。