母親が僕に無関心だと思ってたのは、僕が母親に対して無関心だったかららしい。目が覚めたら、母親が僕の机に突っ伏して寝ていた。僕が眠っている間に監視に来てそのまま寝落ちしたんだろう。時計を見ると9時を回っていた。学校には連絡してくれたんだろうか? 僕は病院に行くらしいから、学校を休まなければならないのではないか? そんなことほとんどなかったから、こういうイレギュラーな事態にどうしていいかよくわからなかった。それで母親を起こした。
「あ…起きたの? お母さん寝ちゃってたわ」
「学校、もう遅刻だけど」
「病院行くから朝に担任の先生に連絡しておいた。あら、9時回ってるわ」
母親はパタパタと動き始めた。僕はパジャマのままぼーっとベッドに座っていた。まだ眠い。だが手首が痛いことに気づいた。
死に損ねた。しかも母親に見つかった。そんな状況なので、眠れないほど張り詰めていた緊張が緩んでいるのがわかった。ある意味なにもかもがどうでもいい。意識が佳彦に向いてないことが大事だ。母親が関与したことで、なんだか日常が戻ってきたような気がする。自分の世界に対する無関心さも回復してきたような感覚があった。考えてみれば強力な効果だった。しかも母親がこんな効果を運んでくるとは。なんという意外性だろうか。傷が痛い。



