「ややややめて下さい! なにするんですか!?」
「え? 聞いてなかったの? これから4時間半挿にゅ…」
「聞いてましたから!! 断じて許しませんから!」
「あっそ。じゃあ話してくれるんだ」
「話しませんよ! なんですかその究極の選択!」
「俺にとっては一大事なの」
「僕にとっても…いやまず僕の方が一大事ですから!」
「じゃあ挿れるわ。岡本も好きもんだなぁ」
「どうしてそうなるの!?」
「ヤラれたいんだろ? 結局。さっきだって終わってたのに、俺ので発情したんだろ? 自殺の屍体じゃなくて俺の身体でさ」
「ちっちっ違います!」
「怖いんだろ。俺に挿れられてまた発情するのがさ。生きてる人間とセックスして感じてイッちゃったの認めたくないんだろ?」
「違うって言ってるでしょ!!」
「なら、話してくれって。俺の質問に答えてくれればいいから」
「いやだ」
「わかった。朝まで挿れるわ」
幸村さんは身体を起こすと、やおらテーブルの上のペン立てに手を突っ込んだ。そして何かをそこから取り、それを僕の前にかざした。
「…それでなにするんですか。脅したって効きませんよ」
「知ってる」
手にしていたのは例のカッターナイフだった。にっこり微笑んだ幸村さんが、チキチキチキと音を立てて刃を繰り出した。そして胎児のように丸まってズボンのゴムを死守している僕を横倒しにすると、矢のような早さで臀部のあたりの布を掴んだ。そしてスエットの股間の縫い目に沿ってカッターの刃を立てた。プツッと糸を弾く音がした。僕は咄嗟にカッターを持っている幸村さんの手を掴んだ。
「ちょっと! ちょっと! 僕の服破くつもり!?」
「脱がせないなら着たまま挿れてやるから。それも凌辱ぽくて滾るけどな」
嬉しそうなテンションを一切変えずに幸村さんは平然と答えた。
「やめてってば! そんなことしたら弁償してもらいますよ!」
「ああ、あとで同じの三着くらい買ってやる。心配するな。色違いのほうがいいか?」
「そう言う問題じゃないでしょ!」
「また俺のでよがってイクのか。見たいなぁ」
僕の手が掴んだところで作業にはまったく影響なく、糸がプツプツ切れるような音が連続して聞こえてきた。その音とこの状況の圧倒的な面倒くささに僕は半ばパニクった。
「やめろぉぉ!! 話すから服切るな!」
その一声で幸村さんの手が止まった。



