着替え終わったあたりで足音がした。僕は人喰いなんとかが背後にいるような気配に後ろを振り返った。幸村さんが真後ろで全裸で仁王立ちになり、僕を見下ろしていた。残念そうな顔で幸村さんが呟いた。
「あぁぁぁ……服着ても無駄だったなぁ、岡本」
「どっ…どういう意味ですか」
「こういうこと」
問答無用で床に押し倒されると、吐息が頬に掛かった。この期に及んでまだ欲情できるのかと、僕は呆れるを通り越して驚いていた。どれだけやりまくったと思ってるんだ。
「犯したい…あははは」
笑っている。自分でも呆れてるんだろう。更に驚いたことは、硬いものが僕の股間に押し付けられてることだった。
「サルですか。人ですか?」
「これはサルより悪いかもな! 俺、壊れたかぁ? シャブ中みたいだわ」
「これ以上やったらもう二度と僕の身体には触らせないですから」
「そう来るか」
「当たり前です」
「好きなんだよ。もうさ、好きで好きで、なんか今日はほんと、驚くほどの途轍もなく大量の岡本愛でもう胸がいっぱいで参ってんだわ。抜かせろ」
「そんな…僕にとって0.1mmも想像つかない感情でいっぱいになられても、返す言葉もないですが」
「そうか。だがご理解頂く必要もないぞ。俺はもうなんだかスゲェ幸せなんだ。ぜんっぜん構わんからな!」
「劣情でいっぱいの間違いですね…それも胸じゃなくてあそこが」
「それも間違ってはいないがな! 愛と性欲は連動してるんだ。愛情アンド劣情そして胸もアソコも一杯ってのが、フツーの人間はな」
「フツーと言われても…参考にもならないですが」
「俺もこんないくらでも勃つのなんて多分初めてなんじゃねーかな?」
「3時ですが」
「3時だな。でももう今日は俺ダメだわ、止まんねーわ。すまんなぁ」
「じゃあ、幸村さんと僕の関係は今日で完全に終了ですね。わかりました」
「おいおいおいおいちょっと待てこら」
「なにか問題でも?」
幸村さんはギューッと僕を抱きしめた。そしてその格好のまま僕に提案した。
「じゃあさ…今度、俺に聞かせろよ。なんで岡本がこんな風になったのか」
「蒸し返しますか、それを」
「ええっ? 困ったなぁ。そうすっと岡本は出勤直前まで挿れられたまんまだぞ」
「はぁ? なんですかそれ?」
「だって犯したら今日で最後だろ。じゃあ悪いけど最後の最後まで挿れとくわ。7時半までな。あと4時間半だな…それじゃあ…」
そう言うと幸村さんはおもむろに僕のスエットのパンツのゴムに手を掛けて本気で引き下ろそうとした。僕は慌てて身体を縮めて両手でその手を掴んだ。



