「…焦った」
「まぁ…そうでしょうね」
「脈も呼吸もあるからまさか死ぬとは思わないが…もう…なんつーか、肝が冷えた」
「それで死んでも恨みませんよ」
「馬鹿野郎! お前死んだら俺はどうすりゃいいんだよ!」

 いきなり激昂したかのように怒鳴ると、両手を僕の顔の両脇の布団にバンと着いて幸村さんは僕を怖い顔で見下ろした。そう言われても、と僕は考えた。それでさっきの言葉をそっくり返すことにした。

「さっき僕に言ったでしょ…罪悪感で悶え苦しんで…死んだらいいんじゃないですか?」
「へ?」
「ですから罪悪…」

 皆まで言わない内に同じように憤って幸村さんが遮った。

「罪悪感なんかでは俺は死ねん! 岡本がこの世からいなくなるなんて悲しすぎるって言ってんだよ!」
「あ…そちらですか」
「…そちらだよ。なんだ、そちらって!」
「ところで、今何時ですか?」
「…夜中の2時だ」
「そんなに長い失神じゃなかったんですね」
「ああ。10分…くらいだな。短くねーよ。長かったよ充分」

 10分は僕にしては短いと言えた。寺岡さんの家で気を失った時は半日くらい意識がなかった記憶がある。ともかく、気を失ったおかげで身体の狂躁はすっかり治まり、冷えていた。

「お陰様で性的な発作は治まったみたいです」

 それを聞くと幸村さんは僕の耳に顔を近づけ、フッと息を吹き込んだ。くすぐったいだけで、身体の反応は起きなかった。幸村さんが布団の中に手を入れた。

「あ…ホントだわ。終わってる」
「ちょ…握んないで下さい」
「いや、いいだろ…フニャチンだし」
「わざわざ確かめなくても…」
「念の為だ」
「触りたいだけでしょ」
「まぁ、それもある」

 僕の縮んだ性器を大きな手で掴んで、ちょっとだけ幸村さんはニヤッとした。そしてもう一度ハーッと長いため息をつくと、ベッドから下りた。風呂入ろうな、と言って布団を剥ぐので、身体を支えられて浴室に一緒に身体を洗いに行った。