気がつくと布団が掛かっていて、僕は仰向けに寝ていた。どうして寝ているんだとか、いったい今は何時だとか、そもそもここは一体どこだとか、基本的なことがいつものようによくわからなかった。裸のままで…自分のベッドだろうか? うっすら目を開けると明かりが点いていて、誰かが隣に居た。僕はその人を見た。目の焦点が合わない。

「岡本…岡本…気がついたか…」
「ん……」

 幸村さんの声がした。その声がスイッチみたいになって記憶が急に回復すると、状況が頭の中で組み立てられていった。そうだ。抱かれてたんだっけ…それでなんかの拍子で、久々に落ちたんだっけ…
 
「大丈夫か!?」
「あ…あぁ…ええ…」
「悪かった。すまん…ごめんな…」

 視界がハッキリしてくると、幸村さんが裸のまま僕の脇であぐらをかいてショゲた顔をしているのがわかった。いつものように頭を撫でながら僕の顔を覗きこんで、珍しくトーンの低い声で幸村さんが僕に小さく謝った。

「調子に乗って激しくしすぎた…俺」
「ああ…いや…ええ…まぁ…」

 激しくすればなるというわけではないが、激しいことが原因で無いわけでもないかも知れなかった。しかし幸村さんは病気のことを言ってからは、頸動脈洞付近には全く触らないし、それだけはよく気をつけてくれている。だから直接の責任はない…ようなあるような微妙さだった。

「…気がついて良かった」
「…ああ…まぁ…」

 幸村さんはホッとして脱力したようだった。驚いただろうなと思ったが、すぐに、悪いが幸村さんにはいい薬かも知れないとちょっと思った。

「こんな風になるんだな。この病気。急にグラっときて…動かないし白目剥いてるしよ」
「僕にもいつ来るかわからないですから…しょうがないですよ。幸村さん首絞めたり、急所押さえたりはしてないですから。多分…咳き込みながら自分で仰け反ったのが悪かったんじゃないかと…」

 それを聞いていた幸村さんは大きく息をついた。そして頭をがっくりと落として項垂れた。