焦らされきっていた性器が感度をいつの間にか上げていて、それはホールの中の刺激を貪るようにビクビクと根本から震え始めた。毎度お馴染みの不意の来訪者とのいつもの攻防のあと、イキかけてたのを焦らされたからか、それとも来訪者自体の存在のせいなのか、熱の冷めてくれないうっとおしい身体に、更に変な興奮が追加されていることを感じていた。
震える度に粒立った前歯が根本の剥けた皮膚に当たり、点状のランダムな刺激で痛みを神経に伝えてきた。その痛みの中で幸村さんの座っている側…身体の右側すべてが、羞恥心と同時に僕の理解出来ない灼けつくような性感に痺れていた。その昂ぶりが急に下腹部に広がった。
「はうう…」
荒い息の中で首をのけぞらせてその刺激に耐える。右側だけ興奮するなんてどうかしてる。腰は勝手にホールの中を貪るようにうねり、それはホールを掴んだ手も同じだった。腰も手も止まらなくなっていたが右側だけ力が入らなかった。もどかしい中でグチュグチュと粘液の音が大きくなっていき、いつのまにか立てた膝が大きく左右に開かれ、僕は知らぬ間にとても恥ずかしい姿で他人の前で自慰を続けていた。
目の端の幸村さんが大きく息をつく音が聞こえ、足を組み替える時のベッドの軋む音が重なる。もうすぐ…もうすぐイク。初めて幸村さんに自分で出せることを証明できる。だから僕にもう執着することはない。責任とか言うけど、僕自身のことは僕自身でやるのが筋というものなのだから。安心して僕を放ったらかしていて下さい。
「あぁ…あぁ…くはっ! ああぁっ! イキそ…もう…っ!」
キマイラによってたかって貪られるこの統一性の皆無な責めは、僕の小脳を出し抜き続けてくれていた。舌でゾリゾリと裏筋をキツく舐め上げられて腰椎の奥がわななき、急に熱くなったかと思うと、その熱が背骨を伝ってボワァァというノイズとなって側頭骨がいっぱいに満たされていった。そのノイズは次第に鼓膜を越えて頭蓋骨自体が振動しているような、それに伴って大脳まで共振しているような文字通り“頭がおかしくなる”感覚に増幅していった。とっさに僕はさっきのように歯の上下の咬合を合わせて両手で挟み込んだ。傷だらけの付け根にビリッと鋭い刺痛が走った。僕は再びその咬合の中で抽挿を激しく繰り返した。記憶がまた勝手にリピートする。この痛み…あの時の傷…滲みて…
「んああああっ! イクぅぅぅぅっ!!」
その瞬間僕は3度めのオーガズムの中にいた。



