僕を止めてください 【小説】




「わかったよ。イキそうだったんだろ。じゃあもう1回イッてみろ。試しに」

 もうてっきりここで犯されるものだと諦めかけていた僕は、まさか返してくれるとは思わなかったので一瞬ポカンとした。しかし数秒後に僕は我に返り、手に掴まされた妖怪をそのまま自然に股間にあてがっていた。なんだかわからないけど僕の言うことを聞いてくれてる。見られている羞恥心より、イキかけてるのをちゃんと終わらせるのを見せて、僕はこの発作と幸村さんから独力で早く自由になろう…そうだ、そうするべきだ、と僕は混乱を振り切るように続行を選択した。

 すると幸村さんは僕の首と膝の下に腕を入れると、そのまま僕を横抱きにかかえ上げた。前にも同じことをされたはずなのに、今回はなぜか恥ずかしさに身が竦み、僕は瞬時に幸村さんに抗議していた。

「な…なにするんですか!」
「続きはベッドでしろ」

 久しぶりに身体を密着してるその急激な距離感の変化と抱き上げられた浮遊感に僕は狼狽えた。

「あ、あ、歩けます!」
「自分じゃベッドまで行く気無いだろが」

 図星を指されて僕は言葉に詰まった。でも別にそんなに大事なことじゃない…はず。
 
「…ない…ですが」
「だからだよ!」
「…それ、なにか問題で…うわっ」

 そう言い終わらないうちにベッドにドサッと僕は放り投げられた。

「自分でイクんだな?」
「ええ…イケます」

 無言で幸村さんはスーツの上着を脱ぎ、床にポイと投げ、ベッドの端に座り足を組み、妖怪を握っている僕の手元をじっと見つめていた。幸村さんのこの一連の行為がどういうつもりか僕にはさっぱりわからなかったが、恥ずかしさよりも僕が貴方なしでちゃんとイケるということを、幸村さんの目の前に突きつけたいのは変わりがなかった。視線から目を逸らし、そして幸村さんが見えないように目を閉じ、僕はもう一度その口の中に先端から性器を挿れていった。

「んんんんっ…!」

 なにが起こるかわかっていても、キマイラの舌と歯がそれぞれ関係なく僕の性器をこすり上げる感覚に、僕は見られていることも一瞬忘れかけて喘いでいた。