僕を止めてください 【小説】




 そう考えるとなおさら試したくなる。自分が本当に死を望んでいるのか否か。いつでも死ねるキッカケはあったのにまだ死んでない僕は本当に死にたいのか? という根本的な疑問の答えを知りたくなる。僕の関係者が悲しむことがなければ僕はすぐ元の世界へ帰還出来るのか、それとも、まだ許可が下りないのか…

(君みたいな後輩に居場所を作って上げて欲しい)

 死ぬ許可、ということを考えた途端、堺教授のあの時の言葉が甦ってきた。業界へのお礼の奉仕と貢献ということ。僕がどれだけこの業界に恩義に感じているか…かな? とちょっと考えた。恩義だけではなく、法医学業界への僕の貢献度合いが人生的に足りなければ、トントンになるまでは許してくれないかも…という気もした。それは僕には量りかねる。それにしても僕が将来、堺教授のような、誰かを守れるくらいのポストに着けているとも思えないけど。それでも居場所は創設出来るのだろうか? それも、他人と関わりを持てないような身の上ではどれもこれもお話にすらならないのだが。

 考え始めたらきりがない。現実の結果を以って答えにするしか結論は出ないと予想した。そうなると、願うとすればこんな言葉だろうか。

(我に自由を、しからずんば死を)

 アメリカの独立戦争かなにかのプロパガンダだったような気がする。意味がだいぶ違ってしまったが、そういうことだ。僕はそもそも死の方にウェイトが高いから、逆にして言わなければならないかも。

(我に死を、しからずんば自由を!)