(もしもし…俺だよ。いまなにしてる?)
僕は自分の手首に痛みと生暖かいものを感じながら電話の向こうにいる小島さんの声に答えた。
「手首…」
(手首…どうしたんだよ)
「切った」
(マジか!? おいおい嘘だろ?)
「僕、やっぱり生きてたくないです」
(ほんとかおま…嘘だろ)
「暗くてどこまで切れたかわかんないですけど…痛い」
(ちょ…部屋か? 暗いって、電気つけろよ)
「あ…はい」
明るくなった部屋の中で自分の手首を改めて見た。衝動的に切っただけのことはあって、どう見ても動脈が切れたような血液の噴き出し方ではなかった。
「あーあ…絶対これじゃ成功しないってわかってたのに」
(お前、その手首写メ撮って送れ。どうせお前、嘘つきのかまってちゃんだろ)
言われたように電話を切り、写メを撮って送った。送信成功のテロップが出た直後にまた着信音がなった。



