「わかんねぇのに使うなよ」
「背中は痛くないです」
「傷口に石鹸入らなかったからな」
「胸の傷が痛いんです…あ、でも少しズキズキしなくなった」
「どうだか。科学者の実験精神てのは本当に無謀だな」
「身体が冷えてきたみたいです…発作にも効いてる気がします」
「そうか…その効果のほうがありがたいけどな」
「すみません…」

 部屋に戻り、再びベッドにうつ伏せにさせられた。幸村さんが冷蔵庫からアクリル接着剤を出してきた。

「またこれかよ。勘弁してくれまったく」
「ごめんなさい」
「長い傷だな…くっつくのか、これ」

 ブツブツ言いながら幸村さんが背中の真ん中に指を這わせた。

「はうっ…」

 また急に下腹部の奥が熱くなった。性器が身体の下で硬くなっていくのがわかった。

「俺の指で感じてるのか…まだダメか。長くなりそうだな…」
「もう…いやだ…」

 傷に沿って指が動くたびに背中が痺れた。息がふたたび上がってきた。シーツを掴んで耐えるが、指先にすら力が入らなくなった。

「まぁ、そんなことだろうと思ったよ…ダメな身体だからな」

 幸村さんの指が唐突に離れた。補修が終わったらしい。幸村さんはついっと立ち上がり、少しして冷蔵庫の締まる音がパタンと聞こえた。ベッドを見下ろして幸村さんが呆れたように呟いた。

「ハァハァしちまって。なにが“発作に効いてる”だよ。ほんっとにエロい顔するよな、こういう時のお前って」

 ベッドに腰掛けた幸村さんは、うつ伏せで喘いでいる僕の背中を意地悪く指でツーとなぞった。

「んあぁ…」

 背中が勝手によじれる。浮き上がった腰を掴まれて仰向きに返された。

「…ダメだ。もう俺が耐えらんねぇわ」

 見ると幸村さんのモノも勃っていた。

「いいです…我慢しないで下さい」
「悪いけど抱くぞ」
「構いません…好きに抱いてくれて」
「いままででいちばんマシな返事だな…犯してる気がしなくて、いい」
「匂い…大丈夫ですか」
「ミントで鼻がバカになってるわ」

 幸村さんは久しぶりにちょっとだけ微笑んだ。

「痛かったら…言えよ」

 そしてそれから明け方まで幸村さんは僕を抱き続けた。すぐに芯の抜けた人形みたいに虚脱した僕の身体を、幸村さんは傷を庇いながら抱いてくれていたようだった。そんな身体でも愛撫されると身体の芯で熾き火が燃え立つように性感が燻り、声も出ないのに、性器だけが硬くなった。終われないことだけがその度にわかった。僕がイクたびに幸村さんもイッた。僕はイッてももうほとんど精液は出なかった。途中から意識が朦朧としてきて、僕はいつしか挿れられたまま意識を失っていた。