「幸村さん…僕のことわかってて言ってくれてるんですね…ありがとう…ございます…どうやって僕、あなたの好意を受け入れたらいいか…考えました…すごく考えた…それは、あの…僕がずっと前から人間関係で決めてたことが今日、なぜかガタガタになっちゃったんで…僕はいま宙ぶらりんです…どうしたらいいのか…ほんとうにわからない…でもリミットはまだ猶予がある。だから僕は後から考えます…明日からどうするか…ええ、明日からです…あ…多分こんなこと言っても…なに言ってるかわからないですよね…すみません」
考えたことがすべて無駄になったんじゃないかというくらい、僕の説明はしどろもどろで、自分でもなにを言ってるのかわからなかった。だがその混乱を断ち切るように、幸村さんは僕に言った。
「ああ。わからん…わからんよ。わからないけどな、でもお前が今ここで俺にどうして欲しいか、言ってくれればいいんだ。それだけだ」
「なんで怒らないんですか…」
「知らん」
幸村さんはいつもの強引さがなくて、それに僕は言い知れぬ罪悪感を感じた。追い詰めてるのか…僕が…また僕はこうやって。
僕はなにも見えない霧の中で幸村さんに言うべきことを探した。考えて出てきたそれは、それは誤解されたら命取りのお願いだった。僕はためらった。言いよどんでも話しあぐねても、それを言うしか答えはなかった。僕は観念した。言うしかない。
「…わかり…ました」
「…なんだ?」
僕は大きく息を吸った。それでも唇は細かく震えていた。
「明日から死にものぐるいで考えます…だから…幸村さん…今夜だけ…僕と…僕と一晩限りで…ここにいて下さい…今は僕…ほんとにどうしていいかわからないんです。関係を積み上げたり、期待をさせたりとか、それはいつものように僕には出来ません。でもそれでもいつものように…幸村さんが勝手に…いつもみたいに僕にしたいことしてくれれば…僕はそれが今は多分…それがいちばん救われるのかもしれません…ダメ…ですか?」
僕がそう言うと、幸村さんはベッドから降りて僕の横に片膝をついた。
「それでいい…それでいいんだ。今のお前にはそれでも120%だ…」
大きな手が僕の肩を抱くと、僕は身体ごと引き寄せられた。そして僕は、幸村さんの腕の中にいた。
「んっ…」
「どうした?」
穂刈さんから受けた傷が、幸村さんの腕の中で少し疼いた。僕は慌てて否定した。
「な…なんでも…ないです」
「え…?」
そのとき幸村さんが、僕の首筋の傷を目で捉えた。
「なんだ、これ…お前また自分でやったのか!」
「いえ、違います…これは…されました」
幸村さんはハッとした顔をすると、いきなり僕のシャツのボタンを外し始め、前をはだけた。
「あ…なんだこれ…なにされたんだ…」
幸村さんの顔色がさっと変わったのがわかった。



