長いセックスの間、僕は身体の至るところを薄く切られていった。穂刈さんは二本のナイフの刀身に僕の血をなすりつけて赤く染めていった。僕もナイフも穂刈さんの身体も僕の血で血まみれだった。それはまるで何かを鎮める儀式のようだった。僕を引き寄せたのはこのナイフだったのかも知れない。あの掲示板の文字が他と違ってたのは、セックスが目的だからじゃなかったからだ。
血を欲したのだ。欲情した血を…僕は生け贄として選ばれた。穂刈さんではなく、ナイフの神に。
穂刈さんは体位を変えて何度も僕の中に出した。僕も出した後挿れられたまま、またしごかれて2回めを射精していた。それでもさんざん焦らされて狂いかけた身体はまだ疼きを残していた。
その時、脱衣所の方で携帯の着信音が響いた。僕の携帯だった。挿れられたまま抱き合って、血まみれの胸を舌で嬲られながらその音を聞いた。誰かすぐにわかった。音が耳について煩わしさが胸を灼いた。思わず手に力が入ると、穂刈さんが不意に身体を離して僕を見た。
「いいのか? 出ろよ」
「なんで…?」
「君の男だろ」
「そんなの…いないです」
「こんな時間にかよ。君が認定してないだけだろ」
「…放っておいて…下さい」
すると着信音は消えた。なぜか穂刈さんが僕から自分のものを抜いた。部屋の掛け時計を見ると12時を回っていた。
「帰ってやれって」
「違います」
「君は死神なんかじゃない。俺にはわかる。だから帰れ」
分かってもらえていたはずのことを否定されて、僕は固まっていた。
「なんで…? わかってくれてたじゃないですか」
「さっきはな。でも抱いてるうちにわかった。君のは違う。言ってみれば…死相の出てる人間を引き寄せるんだ、君は」
「違うんだ…僕自体も死に追いやってる…僕が、生きてる人を愛せないから…」
「死相が出てるから叶わない君に惹かれるんだ。物事ってのはな、強烈に否定すると寄ってくる。二度と味わいたくないものは、また現れる。悪循環なんだよ。体験は信念を強化する。信念は体験を呼ぶ…それにより君は自分をそう言う人間だと認定する。どうだい? 違うか?」
「わかりません…そうだとしても、それを僕は止められない」
「それは呪いのようなもんだな…暗示なのか、トラウマなのかわからないけどな。色恋は出来ないかも知れないけど、君に愛がなければ、自分を死神なんて思わないさ。それに人を傷つけないように誰とも深く関わらないのは、君の愛以外の何物でもないさ。大事なことは強く願うことだ。望んでないんだろ? 君は人の死を」
「ええ」
「本当に死神をやめたいなら、それをたち切ってくれるような人間がきっと現れる。だから諦めるな。時間がかかっても、本当に願ったことは実現するんだ…まぁこれは俺のナイフの師匠の受け売りだけどな。でも俺は間違ってないってわかった。まぁ、俺の望みは君とは逆だったけどな。あっはは」



