「幸村が九州まで行ってある程度詰めてあったんで…まぁそれでこの件が丸暴に来たんだけどね。この男は出始めの質のまあまあ良いDTを大量に在庫してたらしい。元々九州の人間で、最近こっちに引っ越してきたらしい。なんで引っ越したかって言うと、九州の工場とか卸からDTをちょろまかして来たからじゃないかと。で、売りさばこうとして二枚舌使ったんじゃなかろうかって。その話の後、殺されてる。どこがヤったかは不明。当初の顧客だった海神会が、チャイナと出来た仏さんを見せしめにヤったか。九州から来たヤツにヤラれて取り返された可能性。チャイナ半グレが支払いしたくなかったから殺して持ってった…」
「…あの」

 第4の可能性について、その話を聞いて、少しだけ僕は考察してみた。

「なに? 岡本先生」

 塚本警部補が僕を振り返って聞き返した。

「共同戦線という可能性はあるんですかね」
「どんな?」
「二人でやってるから…なんで二人なんだろうって」
「つまり、共通の目的で大同団結?」
「ええ。そういうの…なんていいましたっけ…儀式的な。結婚式で二人で一緒にケーキに入刀する感じの」
「なんですかそれ? そんなのどうしてわかるの」
「なんだか…殺し方が…いっせーのせ…って聞こえてくるような…感じで」
「海神会とチャイナが合流したなんて情報ないぞ」
「…そうですか。なら違いますね」

 情報は無いと言っておきながら、少しだけ塚本警部補は考えるような風をした。

「個人的にというなら分かるが。そんなこと組織に知れたら殺されるわ。そうなると、こいつらはバックの組織を両方出し抜いたってことになる…」

 それはなにかその二人に利が少なすぎるように見えた。

「組織からも警察からも逃げてたらもう高飛び済みか…見つかって始末されちゃってますかね…でもそうしたら海神会とチャイナじゃなくても話が通じるような気が。海神会か永岡連合の若いのがチャイナと共同で殺して献上品持ってジリ貧の暴力団やめてチャイナに寝返る約束してるって方が…将来性感じます」
「複雑だな。でも未来はあるな…きったねぇ未来だけどな」

 僕はなぜかこの殺された屍体と殺した二人が、佐伯陸の言ってた3人組と重なるような妄想に囚われた。さっきまで4人一緒に誰かを輪姦して楽しんでたのに、3人になったら自分だけがキメてて意識が飛びそうで、いきなり前後から二人が同時に体当りしてきた…なんてね。だったら掲示板で呼び出してももう2人組になってるのかも。だがそんな都合のいいドラマみたいな偶然はないな。妄想が燃え広がらないうちに僕はもう口を挟むのはやめた。そうこうしているうちに、塚本警部補を相手に堺教授の刺創の分析が始まっていた。