結局、リアルな想像など当たり前に出来もせず、僕はそれをブックマークして閲覧を終えた。発作も何もないときの僕は、本当にそういうことを一切考えていない。それで何も不都合はないし、不満もない。職場と大学の図書館、面倒な食事の買い物、以上それが僕の日々の暮らし…それでもう事足りる。死ぬまでの間をそれで過ごすのに、なんの問題があろうか?

 いや、問題があるからこんなサイトまで見なければならないのだが…と僕はその考えを少し訂正した。問題は実に山積している。幸村さんのこともさることながら、佐伯陸が確執のある母親を僕に投影していることがこの2日間でよくわかったし、それが佐伯陸の母親に対する渇望であることもなんとなく見えてきた。ど淫乱の原因もそれなりに彼の性癖もあるが、放置された上に親の良いように扱われた恨みと復讐にその性癖が膨化している感は否めないようだった。今後それが僕にどう向かってくるのか…そして佐伯陸の僕への依存を今後どのように食い止め、僕を必要としないように持っていくのか? 今の僕にはとんと見当がつかなかった。

 それに加えて『DT』問題もその上に積まれた。打ち明けた佐伯陸と幸村さんとの間に何か起き、その火の粉がこちらにも降りかかってくる可能性とか、想像はつかないが、可能性としては考えられる。なんせ二人共、こちらの推測の斜め上の行動しか取らない人たちだ。僕の貧困な想像力では彼らの行動を予測することなど、到底無理だろうと思われた。

 しかし、佐伯陸がヤラれたように、もし例の3人組とやらが例の手を使ってこの界隈のゲイ世界にDTを蔓延させているとしたら、あの3つの切創の事件とは関係がなくともとんでもない話しには違いない。どのみち早めに立件して拡散を食い止めて加害者をぶち込んで頂くに越したことはないと言えた。リキ入れて増員している麻取が潜入でもして頑張ってくれるだろうし、それにいづれ厚労省から指定薬物の省令が出ればこの手のものは市場から消えてしまうようだった。

 あとは「水」などと呼ばれる効かないまがい物が横行してバレるまで荒稼ぎする。でも一度それを使った人は忘れられずにまがい物にも手を出すのだそうだ。そして効かないというレビューが出まわると商品はいつの間にか消え、また新しいものが出て来る。ラベルを変えただけのものとか。そしてこれの繰り返し。どれもこれもエロのためだ。涙ぐましいと思った。