「クスリ漬けかって思いました?」
「いや。最近あれのサンプルが回ってきててね。そういえばこれ見たことあるって思ったら、君んちだった。事件も多発してて、死人も出てて、法律改正されて、持ってるだけで捕まっちゃうの、知ってるかなって、一応聞いとこうかと思って」
「あ…そうなんだ。どうしよう。あれ、空っぽなんだけど」
「使いきったの」
「空のビンがベッドルームに落ちてたんです。3人来て、ボク入れて4人だったから、皆んなでキメてボクを輪姦してるうちに1本使いきっちゃったんじゃないかなぁ。あの日は、夜来て昼くらいまでずっとしてたから…ノンストップで…えと…12時間くらい?」
「ハードだね」
「うん。ハードだった。縛られて口輪されてイキまくって、あとから量ったら2キロくらい体重減ってた。でも途中からあんま覚えてない…もったいないよねー。キャミソールとかパンティとか破れたり切られたりしてたけど、そんな美味しいとこ覚えてないんだよなぁ」
佐伯陸はさも残念そうに口をとんがらせた。ヤラれたことの割に余裕ある態度だった。
「前向きだね」
「言ったでしょ。犯されるのが一番好きだし。それにそのころはもうなにがどうなろうとどうでも良かったから」
「誰が持ってきたとかわかんないね、じゃあ」
「ええ。それにあの人達本名も知らないし。出会い系の掲示板で連絡取ってフタ開けてみたら3人だったの。1人で来るって言ってたのにちょっと驚いた。でも今でも同じ名前でよくそこの掲示板で漁ってるよ。男の娘系の初心者の子」
「なんで空ビン取っといてあるの」
「ラベルがキレイだから」
「幸村さん、そのリキッドの線捜査中なんだけど…しかも殺人事件で」
「ええぇ〜! やだなぁそれ! 捜査線上にボクの名前上がっちゃったりするの?」
さすがにそれは嫌だと見えて、佐伯陸は素っ頓狂な声で僕に訊いた。
「自分で買ったり、譲ってもらったりしてないから大丈夫じゃない? 無理矢理使われちゃったんでしょ?」
「うん。間違いない」
「捜査の情報としてその掲示板のこと佐伯君から幸村さんに言う? というか、そういうこと言って幸村さん君のことどうするかわかる?」
「浩輔の役に立つなら教えてあげたいなぁ…」
「幸村さんは君のことどう扱うかな」
「あ…裕さん、もしかして心配してくれてます?」
「ええ。逮捕とかマズいでしょ。仕事柄」
「もっちろん」
「じゃあ、ビン捨てたほうがいいかもね」
「ボクのこと心配ですか?」
嬉しそうにそこを突いてきた。だが、いまの重点はそこじゃない。



