「でもその時期に僕がアスペって診断が出てね。お母さんはそれが嫌で、すごく厳しく躾けられたんですよ。世間体が悪いって、医者の言うことなんか全然聞かなくて。アスペルガーって認めたくなかったっていうのかな。でもよくよく観察してみればお母さん自体がアスペっぽい人なの。笑っちゃうよね。だってそのアスペ気質のお陰で世界的にも有名な物理学者になれたんだし。そういう脳の偏りって理数系の天才には多いんですけどね。でもそんなこと言ってみても怒るだけで話しになんない。そのうち僕を世界に連れだそうとして、英会話の家庭教師雇って僕に付けたんです。それが間違いの始まり」
「ああ、例のね」
「ええ。イギリス人のハーフで日本語も英語も両方堪能な人だったですよ。お母さんの大学で通訳の仕事してたらしいけど。それだけじゃ生活できないからカテキョバイトもしてた。で、仕事で忙しい親がほとんどいない自宅で彼にしたい放題エロいことされて、こんなインランになっちゃったんで」
そろそろいいかなと、僕は気になることを訊いた。
「そう言えば、この前君のベッドの棚にドラッグ置いてなかった?」
「ああ…あれね。誰だったかな…うちに確か3人くらい来て輪姦されたときに多分使ったんじゃないんですかね。知らないうちに置いてったみたい。使われたからだと思うけど記憶が飛んでてあんまり覚えてないんですよね。なんか長い時間メチャクチャヤラれた気がする。でもキメセクなんてしなくても、ボクなら果てしなくインランになれるのに…ナメられたもんです」
そう言って佐伯陸は笑った。
「その上ね、多分そのせいで後からすんごい鬱っぽくなっちゃって大変だった。前にも一回誰かに使われてまぁまぁ気持ち良いんだけど、そのあとドッカーンて精神が落ちるからヤバいんですよね、ボク。けっこうその鬱が何日か抜けないの。だからクスリは使わないんです。ああ…その鬱んときに浩輔から電話があって、なんかその勢いで裕さんに凸しちゃったんじゃなかったっけ…」
記憶を思い出すように佐伯陸は天井を向いてソファの背もたれにパフっと身体を預けた。その姿勢のまま彼は僕に訊いた。



