僕が目を覚ますともう部屋の中だった。抱きかかえて来てくれたらしい。いつものソファに横向きに寝かされていて、下半身だけ脱がされていた。彼は薄暗い部屋の中で、ソファの前のテーブルに例の写真集を広げて、やはり僕と同じように下半身ハダカのままそれを見ていた。僕はゆっくりと起き上がった。彼は僕を振り返らずに僕に語りかけた。

「この本で…何度抜いたかな…僕はこれ、汚さないようにするの大変だったんだ」

 僕は彼の背後からそれを覗きこんだ。

「でもね、好きなのとそうでもないのがあってさ…この写真と…」

 そして、何枚かめくってそれを僕に示した。

「これ…僕はすごくそそる…今も…」

 そう言うと彼は自分のペニスを空いた手で掴んだ。

「たまらない…この2枚…」

 僕はそれをじっと見た。こんな写真あったかな? 何度も何度も全部のページをくまなく見ているはずだったのに、この2枚は記憶が曖昧だった。一枚はベッドで足を投げ出して壁にもたれた中年の男が、猟銃を口に入れて後頭部が砕けている写真。もう一枚は列車への飛び込みで、頭と足が列車の陰からありえない角度で出ている写真だった。