僕を止めてください 【小説】





 佐伯陸は腕を僕の腰に回し、服の上から性器に唇を押し当てていた。軽く噛んだりキスしたりと、僕の股間を口でいじくり回した。しながら佐伯陸は僕に尋ねた。

「…押し倒したり…したく…なりませんか?」
「ならないですが…なにか問題でも?」
「我慢してます?」
「いいや。全然」
「ですよねー」

 佐伯陸はいきなり顔を上げ、面白そうな顔で僕を見上げた。

「すごーい! これやって勃たなかったのも押し倒されなかったのも初めてだ!」
「そうですか」
「すごい! その歳でEDとか?」
「いいえ。むしろそうなりたい」
「ええぇぇ! ボクってそんなに岡本さんのシュミじゃないの?」
「いえいえ、どんな趣味もないから。言ったでしょ」
「じゃあ、なんでEDになりたいの? あぁ、やっぱりネクロフィリ…」
「違うって」
「もう隠さなくても…」
「性欲もないのに勝手に反応することがたまにあると、熱が上がるからほんとに気持ち悪いんだよ。不快だし、精神は混乱するし死にたくなるし、いいことない」
「へえぇ、それはツライですね。わかった。でも、スゴいなぁ。だいたいこの流れで犯されなかったことなんかないのに」

 こういうことをよくするのか。

「何度もやったんだね」
「うん。我慢できなくなる…淋しいと。だからわからないんです。抱きしめられるだけで満足できるのか、成功したこと無いんで」
「だって、自分から破壊してるじゃない」
「だって…欲情してるのに『抱きしめるだけで良いです』なんて可哀想すぎるじゃないですかぁ」
「それなら股間を嬲らなくてもいいでしょ」
「あれは反応しない人に敢えてやる負荷試験」
「ブドウ糖負荷試験で糖尿病になっちゃう人もいるんだよ」
「それはすでに弱ってたんでしょ? 発症寸前。もっとね、丈夫な人がいいの」
「負荷試験厳しいね」
「うん、そう。で、犯される」
「君は欲情してないのに?」
「最初は欲情してなくても、無理矢理押し倒されて犯されてるうちに感じてきちゃうから…ドMなんで」
「あ、そう」
「これで初実験できる! やたー!」

 股の間に座って見上げながら佐伯陸は嬉しそうに笑った。

「では、こちらにどうぞ」

 佐伯陸は立ち上がると、リビングの奥に僕に手を引っ張って歩き出した。奥のドアを開けると、そこは寝室だった。