その次の日、学校帰りに図書館へ行くと、佳彦が僕に声を掛けてきた。閉館後に僕は彼の車の中にいた。

「写真集、返してくれるかな」

 彼はエンジンを掛けながら僕にそう言った。

「今、持ってないですが…」
「君の家まで行くよ。取ってきてくれないかな」
「ええ、わかりました」

 家の近くで車は停まり、僕は自分の部屋から彼の黒いトートバッグに入れて写真集を持って車まで帰ってきた。彼が助手席のドアを開けた。僕は座席に座り、バッグごと彼に写真集を返した。

「はい、長い間、ありがとうございました」
「いいの? これでいいの?」
「え? なにがですか?」
「いや…ドア、閉めて」

 彼はなにか言いかけて、やめた。それから再び走り始めた。

「こんなつもり…無かったんだけどなぁ…参ったな」
「何がですか?」
「怒ってるんだよ。僕は」
「昨日のことで、ですか?」

 さすがに僕もそれくらいはわかった。というのは尾崎…野崎さんに聞いたからだが。

「へぇ…君がそんなこと言うとは思わなかったよ。よくわかったね」
「あの、野崎さんが言ってましたから」
「のざ…き…?」
「あの大きい男の人」
「あいつはコジマだよ…名前覚えないなぁ…ま、いいけど。小島、余計な事言いやがって」
「僕に切れてたって」
「そのとおりだけど」
「僕が誰にでも抱かれて誰とでもイクからだと言ってました」
「だよね」

 そしてタメ息をついた。

「なのに…もう本取り返してバイバイだって思ってたのにさ…顔見たらなんか色々言ってやりたくなった」
「そうなんですか」
「くそっ…君、ホントに殺しちゃうよ?」

 憎々しげにそう言われた途端、僕は昨日の性感の中に引き戻されていた。