さっきの音はどうやらインターホンだったらしい。呼び鈴なんてほとんど使われたことがないので、チャイムの電子音のパターンを忘れていたのだった。鍵も掛けられずに転がり込んだんだっけ…よりによってこんな時に…と僕は驚いて少し正気になった頭で思い出していた。床に倒れたまま起き上がることも出来ずに僕は声のする方を見上げた。幸村さんがいつの間にか僕の側に立っていた。

「午前中の遺体…自殺だったろ」
「なんで…わかるんです…か…」
「午後行った時に一発でわかったわ。必死で我慢してたろ…なんだこれ? 自分で切ったのか、血ぃ出てるぞ」
「勝手に…入らないで下さい…」
「チャイム押しても返事ないし。鍵空いてるから教えてやろうと思ったんだよ。それに…」

 幸村さんは僕の側にしゃがみこむと、喘ぎながら床に転がっている僕の頭を撫でた。この前帰るときのように。

「言っただろ…俺が責任取るって」
「承諾…してない…また…犯すんですか」
「しねーよ」

 幸村さんは僕の身体をひょいと抱きかかえると、そのままベッドに運んでいった。こんなことされたのは隆として以来だった。僕をベッドに投げ出すと、幸村さんはコートと上着を脱いだ。

「なんで…」
「早く出して…寝ろ」
「出ない…んだ…」
「だから…俺がしてやるから。お前すぐイクだろ…こうすると」

 大きな身体が上に覆いかぶさってくる。顔が首筋に埋められ、唇が胸鎖乳突筋の付け根を吸った。あの時と同じように頭の中が痺れて声が漏れた。同時に手が僕の性器を握ってしごき始める。

「ああっ…」
「すぐよがるし。すぐ出ちゃうだろ。逆に早すぎるわ」

 耳に口をつけていやらしいことを囁く。背中が反り返る。舌がシャツの襟元から耳の付け根に向かってなぞり上げられる。そのまま耳たぶを噛まれて口で弄ばれた。昼間から切迫している身体は、5分も経たないうちに幸村さんの言うようにそのまま昇りつめた。

「くあぁぁ!」
「いい声だ」
「あああっ…イクっ! イクっ!」
「いっぱい出せよ、ほら」
「んああっ…ああ…あ…」

 爆発したかと思うくらい、勢い良く精液が放たれ、この前と同じように幸村さんの手の中に僕の体液が握られていた。その指の間から僕の下腹部に粘液が滴った。射精と共に焦燥と切迫感が霧散していった。