「こんなんでイクのか」
「…こんなにしたの…誰ですか」
「俺じゃないぞ。屍体だろ」
「…ああ…そうですか…ああっ」
「あん時も…俺じゃなくて屍体見て勃ってたんだろ?」

 幸村さんは手の中の僕の体液を僕の下腹部や腿の内側に塗りつけて手を拭った。僕はその感触に再び身悶えした。

「まだ足りんだろ…その様子だと。エアコンつけるぞ」
「…け…けっこうです」
「素直じゃねぇなあ…あ、リモコン見っけ」
 
 勝手にエアコンをオンにして幸村さんは起き上がり服を脱ぎ始めた。裸になった彼はもう一度さっきのように僕の上に乗って身体を合わせた。そして真面目な顔で僕に言った。

「君の発作の事後処理は俺がする。だから屍体の分け隔てなく目一杯仕事してくれ…頼む」
「な…なんですかそれ…要りません」
「ほんとか?」

 そう言うと彼はタイヤ置き場で僕を屈服させたのと同じく、僕の首筋に顔をうずめた。

「やめっ…! ああっ!」
「無理すんな。俺も無理しない。こんな不幸な身体を放っときたくないわ」
「かっ勝手な…はうっ…勝手なこと…」
「どうでもいいんだろ?」
「いまだけ…です…でもこれで最後です幸村さん」

 一番重要な問題はもっと別のところに存在する。そのために僕はずっと個人的な関わりを持たずに今まで来たのだ。隆と別れてからずっと。

「僕に関わると…みんな…死ぬ」
「じゃあ屍体と一緒に居るのは気が楽だわなぁ」

 なぜかそれを呆気無く言い当てられた。僕はちょっと驚いた。抱かれながらこんな話をするのは久しぶりだった。

「よく…おわかりですね…」
「楽しそうだからな…君の解剖はいつも。そんなヤツ初めて見たけどな」