いつの間にか自宅のマンションに着いていた。身体を抱えられてエレベーターに乗り、部屋の鍵を開けさせられ、自分のベッドの上に寝かされて気づいた。なんでこの人は僕が教えてないのにここまで来れたのだろうかと。

「幸村さん…なんで…僕の家知ってるんですか?」
「ああ、何度か尾行したからな」

 顔色ひとつ変えず、当然のように幸村さんは答えた。あまりのさり気なさに呆気にとられた僕は言い返す言葉も思いつけなかった。

「…それは…ご苦労様です」
「君は自宅と大学とスーパー丸屋以外の生活動線がないのか?」
「…おおむね」

 尾行までされていたとは…ゆっくりとディレイで驚きが芽生えてきた。そんなことを話しているうちに勝手に服を脱がされていく。

「なんで拒否しないの?」
「さあ…もう…どうでもいいから…ですかね」
「どうでもいいなら遠慮しない」
「幸村さんって…ゲイだったんですか」
「ああ。そうだけど」

 それ以上会話が続かなかった。言うことがなかったというのもあるが、その前に幸村さんの唇が僕の唇を塞いでいた。さっきまで拷問じみた行為を受けていた人間からキスされている。僕は自分の人生のおもちゃになったような気がした。いつもこんな皮肉さで誰もが迫ってくる。

「んっ…」

 思ったより感じている自分に呆れていた。あんなことされても本当に身体はどうでもいいんだ…ビョーキだな、マジで。裸の僕の身体の上に、スーツだけ脱いだ着衣のまま幸村さんがのしかかっている。キスしたまま彼の右手が堅く尖った僕の性器を握りしめた。

「んぐっ!」

 それだけで背中が破傷風の発作みたいに弓なりに反り返った。その腰を左腕で抱き締められると腰が勝手にくねった。ここまで感じているのは未だかつて無いことだった。それを幸村さんが無理やり体重で上から押さえ込む。押さえ込んだ隙に、何度かしごかれるといきなりオーガズムが襲って来た。

「んあああっ!!」

 こんな簡単にイクのかと驚くほど早い射精だった。