僕を止めてください 【小説】





 マスターでもさっきの従業員でもない男の人が入ってきた。背が高くて大きな人だった。

「久しぶりだな」
「そうだっけ」
「この子?」
「うん」
「好みだな。お前良くわかってるなぁ」
「じゃあ、打ち合わせ通りよろしく」

 彼がソファから立ち上がった。大きい男の人が僕の横にドスンと座る。彼は壁にもたれて僕と男の人を眺めていた。

「じゃ、いくわ」

 そう言うと、男の人は僕に覆いかぶさってきた。この人に犯されるのか。ということは、これは先日の佳彦の言ってた“君を僕以外の誰かに落としてもらう”ということの実験をするんだろう。僕は絞めやすいように、押し倒されながら首をのけ反らせた。男の人の大きな両手が首を包む。いつもより広い圧迫感が頸動脈に襲ってくる。

「あ…ああ…」

 僕は思わずよがり声を上げた。頭の中に痺れがくる。下腹部に熱い熱の塊を感じた。気持ち良い…ダメだ…誰でも気持ちいいんだ。

「はうっ…!!」

 僕の股間で精液がしぶいたのを感じた。一瞬遅れて、意識がなくなった。

 次に気づいた時、男の人は僕を裏返して後ろから犯していた。壁にもたれてたはずの佳彦は見えなくなっていた。僕の意識が戻ったのを男の人がわかったみたいだった。動きを止めて、彼が僕に告げた。

「帰ったよ…松田」
「そうですか」
「いいのかよ」
「ええ」
「お前、見かけによらず淫乱だな」
「そうなんですか…?」
「誰とでも寝るのか?」
「別に…そういうつもりではないです」
「松田は鬼畜だな。お前松田から言われたから俺と寝たんだろ?」
「ええ、まぁ、そうだと思います」
「俺が絞めてもお前がイッたんで、ショックで帰っちまった」
「そうなんですか」
「好きじゃないの? ヤツのこと」
「わかりません」
「困ったな。でも松田が困ってるのおもしれーな」

 僕はそのあとも、意識のあるままずっと犯されていた。この人は僕が目が覚めていても欲情するんだと知った。初めての体験だったが、僕がイクことはなかった。