堺教授…僕のたった1人の上司だが…がインフルエンザにかかり、高熱を出して倒れた丁度その日、図ったようにある遺体が運ばれてきた。表向きには事故死として届けられたその調書を幸村さんは全く信じてはいなかった。その件には高額の生命保険が絡んでいた。3年未満の自殺では保険の適応にならない。家族の誰かが現場の偽装をして事件に見せかけていた。
タバコの灰の不始末による、2階からの出火で家屋は半焼。普通、火災は犯罪性が高いこともあり、検視率が高いことは常識的だが、その件の前後に、放火事件が相次ぎ、残念なことに消防も警察も人出が足りない時期だったらしいと後で幸村さんから聞いた。焼死したのは喫煙者の男性で、その時点で担当が保険金の照会をしていればすぐに司法解剖に回されたであろう事件だった。
こういう資料がある。《犯罪見逃し防止の指針と現状》。この中に、『犯罪死の見逃し事案・分析(平成◯◯年〜×△年)』というものが分析資料として記載されており、さらに詳しい資料として『被疑者が配偶者、親族の保険金殺人の見逃し件数』という大変お恥ずかしい統計と分析がある。こういう恥ずかしい身内の実態を研究できるようになったことについては僕は高く評価するけど。
さて、その事案の分析に「保険金照会があれば事件性を見抜けたもの」という分析結果が書かれていて、それに関して“14件中10件”という恐るべき間の抜けた捜査の現状が明らかになっている。そして毛色は違うが、そのような分類をされてもおかしくないであろう1件がこの事件だった。



