「まだ…していいか…?」
未練がましく幸村さんが僕の仙骨に自分のモノを擦りつけてくる。問題はこの人だ。
「僕、もう落ち着きましたけど」
「俺はしたいんだけど」
「オナホ替わりに使いたいんなら、ご自由にどうぞ」
「…それな、お前いつも」
「いきなり変わりはしません」
「そんなだから、お前はしつこくいじられるんだ」
「そんなって…どんなですか?」
「お前の心を開いてみたいって思うじゃん」
「死にたいんですか」
「あのさぁ…んなわけねーだろ。お前が考え過ぎなんだよ」
「リミット…気をつけて下さいね。それと、そろそろ僕、無視しますから」
「おいおいおい、無視すんなよ」
「安全第一ですよ、まずは僕が幸村さんを観察しないことが大事。前にも言ったでしょ。忘れるなら取説作ります? 警察手帳に入るようなやつ」
「出た。岡本文書館謹製、岡本文書」
「なんで前の職場のアダ名知ってるんですか?」
「同僚から聞いたよ」
「隣県ですよ?」
「連続殺人事件でたまたまそこの県警と合同捜査した時に司法解剖立ち会ったらしいよ。お前のこと知ってた」
「じゃあ、いろいろ聞いてるんでしょ? けっこう浮いてましたから」
「結構じゃない。完全に変人扱いだったぜ。そうだなって違和感なく納得したけど」
「まぁ、慣れてます」
ここに来たのも半分は追い出されたようなもんだ。半分は希望だったけど。しかし、岡本文書館とは…懐かしい響きだ。ただ単に直接喋らないで最小限の会話で意思疎通を図るために、僕は用件や連絡事項をしょっちゅうパソコンで文書を作ってメールやプリントアウトをスタッフに渡していたからなのだが。ほとんど無言で手渡すそれは、どう解釈しても奇異な行為に映っただろう。僕もそう思う。ここでもそれは変わらない。まだうちの上司の堺教授には僕の前職場でのあだ名は耳に届いていないらしい。
「取り敢えず、死なないで下さい。幸村さん優秀ですから。それこそ検挙率下がります」
「あー! 今のスゴい愛されてる感じした」
「全人類愛してますから。ですから、僕の視界には生きてる人はいれません」
この人と話してると調子が狂う。おかげでズルズルとなし崩し的に付き合わされて今日に至った。この人に掛かると、容疑者もこんな風になし崩し的に自白させられて、いつの間にか被告人と呼ばれるようになるんだろう。良いお手並みだ。



