「お前だって、ホントのところはまんざらでもないんだろ?」
「いいえ。こんなことになってもそれはないです。例の人だってそうだったって言ったでしょ」
「そのお父さん替わりって人?」
「ああ…考えてみれば似てるかも。自衛官と警察官。なんか…武闘系で公務員で、責任感あってドSで…変態?」
「変態はねーだろ。それに俺ドSじゃないし。優しいだろ? いつも」
「無理やり犯しますよね」
「だって…したいんだもん。お前がエロいからだろ?」

 悪ガキのような顔をして彼は僕の耳に囁いた。一瞬ゾクッとした。

「それとな、ゲイは変態には含まれねーの。知識として覚えとけ。お前も結局は女の子と付き合ったことないだろ。話の限りじゃ」
「誰とも恋愛したことなんてない。ゲイでもヘテロでもない」
「そのほうが俺にしてみたら変態だわ。大学時代も、こんなことなかったの?」
「完全に閉じてましたから」
「…我慢出来たの? アレ」
「…なんとか。対策はありましたし」
「じゃ、なんで今こんな?」
「わかりません…幸村さんのせいですかね」
「へぇ。左右されるんだ、俺に」

 嬉しそうにそう言うと、彼は僕の胸に腕を回した。僕は抱えられた猫のようになった。

「ですから最初のアレは…ミントのスティック失くしたのが敗因ですから。偶然そこに幸村さんが来ちゃって…」
「ホントかねぇ…まぁ…驚いたけど。あれは参った」
「またそのこと…もう忘れてよ…ほんと、しつこいですね」
「だってさぁ、お前からかうと面白いんだもん。すげぇ一生懸命理詰めで反撃すんのな」
「大人の余裕ですね。別にいいですけど」
「いなくなっていいのかよ、俺が」
「ですから…早く逃げてくださいって言ってるんですが」

 変な人だ。というか、僕が変な人にしか好かれない。