ようやく身体を起こす。タイルに脚を投げ出し、壁に寄りかかってホテルの安っぽい匂いのボディソープで体中の粘液を落としている。寝ているとタイルの硬さに身体がもたなかった。早くベッドに戻って少しだけ寝よう。それだけの目的のために身体を洗っている。今日も仕事だ。何事もなかったように出勤して、教授室で仮眠しよう。ドリンク剤3本くらいで持てばいいな。しゃべり始めればこっちのもんだ。昼間は少しは頭も働くさ。ゼミの子が今の私を見たら驚くだろう。無敗無敵みたいな高慢ちきさが売りなのに。この落差。それが…
 
 もうひとつある拭いがたい欲望。汚されて貶められたいという欲望が、今の状態を続けさせている大きな原因のうちのひとつだろう。これは自分で今まで抑制できた試しがない。排泄が生理的に我慢できないのと変わらないほどの強さを持っているような気さえする。それを今なら際限なく繰り返せる。絶望を燃料としてそれは動き続けるから。君という許可証も発行された。他になにが要ろう。有名なリンチの手法を思い出す。欧州やアメリカでは体中にコールタールを塗りつけられ、鶏の羽をまぶされて手足を拘束され、横木や馬で引かれた。それを知った時に私は言い知れぬ身体の疼きを感じ、それをされる想像をしながら、何度も独りで抜いたものだった。

 恥辱刑。こんなそそる刑罰がこの世にあるだろうか? 私はマゾヒストではないと思うが、この件に関しては、自分がなんなのか、すっかりわからなくなる。わざわざ悪いことをして罪を作り、罰されることを望んでいる。こうやって誰の気を引こうというのだろう。だがそれも思い通りにはならず、放って置かれる。仕方ない。他人がしてくれないのなら、自分でするのみだ。