電車を2回乗り換えてかれこれ1時間、ようやく着いた駅の南口改札を出ると、出口の柱に大きめの地図が掲示されていた。南口から地図をバス通り沿いに真下に辿って行くと、大通りの右サイドに大きな建物が示されていて、そこに『**市役所』と書かれていた。隣には市のプールと体育館があり、その周辺は公の土地が広がっていた。公務員住宅地、税務署、地域センター、etc。僕はそれを確認して、大通りに出た。広い歩道を人にぶつからないように歩く。土曜日だからか知らないが、人通りがあるのでレンガを敷き詰めた歩道には歩行者が多かった。
300mほど歩いた先に、大きくて四角い白い建物が見えてきた。そこが市役所だった。
(あれ? 大きいね。あそこに行くの?)
小さい裕がはやる気持ちを押さえきれずに僕に訊く。
(そうだよ。電車で来れるところで良かったよ。もっと遠かったら、事情を説明して書類を送ってもらわなきゃなんなかったんだよ)
(そっかぁ…いろいろ大変なんだね)
(ちゃんと見れるといいね)
(うん。ぜったい見なきゃ…)
話しているうちに、正面玄関に着いた。自動ドアがスーッと開いて、僕達はそのまま止まらずに中に入っていった。吹き抜けの広いエントランスはガラスを多く用いた現代的なデザインで、真ん中に抽象的で変な形の金属かなにかのモニュメントが置いてあった。案内図を見つけて、戸籍サービスの窓口を探した。“2階フロアの2番窓口”と表示されていた。僕は吹き抜けのエントランスをぐるっと回って2階へ行くロビーの階段を上っていった。



