パソコンの前で3日目、『特別養子縁組』と『実の親』という組み合わせの検索ワードがヒットして、僕はようやく欲しかった情報を手繰り寄せた。

 大手の質問箱に寄せられた、僕と同じ境遇の誰かの質問が検索結果にあった。内容を見ると、今の僕の知りたいことを代わりに訊いてくれているような内容だった。僕はその項目をクリックした。

『Q.特別養子が実の親を探す方法を教えて下さい。

 先日戸籍を取りに行ったら、自分の戸籍に民法817条の2と書いてありました。調べたら私は特別養子縁組で、今の両親に縁組されたようです。親は一切そのことを私に言っておりません。ですので今の両親には内緒で、実の両親が誰なのか、いまどうしているのかなど調べたいのですが、どのように戸籍を取ったらいいかわかりません。方法を教えて欲しいのですが、お願いいたします』

 それに対して、いくつか回答が書き込まれていた。その中に、自分が特別養子縁組されて、実際に調べた人が回答をしていた。

『A.特別養子縁組は実の親やその親族との血縁関係を一切終了させるものですので、実親の戸籍を取ることは出来ません。ですが、自分の戸籍を遡って順々に取得していくことは可能です。まず、実の親から戸籍を独立させるために、特別養子自身が筆頭者の戸籍を作ってあります。なので、その従前戸籍の住所の役所に行き、除籍謄本を取ると、そこにあなたの両親、またはどちらかの親御さんの氏名が書かれていると思います。
 私もこの方法で調べました。しかし、私は母親の名前しか除籍謄本になかったので(離婚でシングルマザーとか私生児だったのでしょうか)、父親は分かりませんでした。そこから先は、探偵や興信所の調査でしかわからないそうです。40万くらいかかると言われ、泣く泣く諦めました。見たくない事実も明らかになったりしますので、覚悟は決めておいたほうがいいですよ』

 僕と同じ人間がいて、同じことを知りたがっていたことに、僕はフッとなにかの緊張が解けたような気がした。居るんだ。現実に僕と同じこういう背景を背負った人間が。小さな裕が話しかけてきた。

(わかったの? これからどうするの?)
(除籍謄本を、あの場所に取りに行くんだ)

 そうだ。僕の戸籍にあった“従前の戸籍”に記載された住所…**県**市に。