興味がないのは、興味を持つとこうなることを知ってたからなのだろうか。僕の性癖は自分を守るためにあったのかも知れない。

 ベッドの中で天井を見上げていた。外界から感覚を遮断することと死は似ている。僕はそうやって自分を隔離していたに違いない。自分でも覚えていない物心もつかない以前から。そのことを忘れていたのか…こうやって外側から押し入られ、無理やり感覚を揺さぶられて開かされて、嫌々ながら起きてみたら、忘れた目的がゆっくりと解凍され始めて、まるで氷河の中のマンモスが、地球温暖化で現れてしまったように、目の前にそびえ立っていた。この大きな影を見ないように僕は目を閉じ、耳を塞いだんだろうに。

 ごめん、小さい僕。君は賢明だったね。封印したことを忘れるくらいちゃんと閉じ込めていたのに。まさかそれを掘り起こす人が居るなんて思わなかっただろう。人生とはかくの如しだ。以前、隆の言ったように。

(こうやって思いもかけないとこで自分の望みもしないことが起きるんだ。鉄の塊みてぇに炉に放り込まれて、ボコボコに叩かれて勝手に形を変えられてく…)

 僕は自分がなんで死んでいた元の状態に戻ることに固執していたのかわかったような気がした。感覚を遮断できなければ死を選ぼうとすることも、この期に及んで正当だったように思えた。おかげでいまだ、こんな事態になっていても、あからさまな感情は湧いては来なかった。ただ空虚感だけがあった。そしてそれを僕はどこかで知っていたような気がした。だからどこかで僕はこんな風にも感じていた。

 あーあ…折角封印してたのに…

 嫌だったんだろうな…きっと。その記憶は思い出せないけど。嫌いなものが無かったのは、嫌いなものを思い出さないため。だから生き返ったこと、その熱が、僕に嫌悪感を抱かせた。だって…そのあとの空白が僕を薄ら寒くさせた。

 だって?

 再び例の問いかけが僕に囁いた。

 “僕はどこからやって来たの?”

 まるでそれは、賢明だった小さな僕が、今の僕に訴えているように聞こえた。そうか…そうしたいのか。それで気が済むの? それで答えが出るのなら、君がしたいようにすればいい、裕。僕はそれを小さい僕に簡潔に翻訳してあげた。

(僕の本当の両親は誰?)