《特別養子縁組とは?ーNPO法人青い鳥の会》

『特別養子縁組の目的とは「子供の福祉、利益を図るため」にあります。養子の年齢は原則申立時に6歳未満で、養親からの離縁は原則出来ません。戸籍上も「養子・養女」ではなく、実子と同じく「長男・長女」と記載されます。特別養子縁組確定後、養子は実親や血縁親族との縁が切れますが、普通養子の場合、戸籍上実親と養親の二組の親を持つことになります。特別養子縁組では、戸籍上も嫡出子とほぼ同じ戸籍謄本となります…』



 それはまるでフィクションのように見えた。自分の人生が架空の物語に吸い込まれていくような、変な感触だった。意味がわからない。わからない? わかりたくない? 僕の頭は理解を拒否してるかのようだった。英語の文字列のように目の中で文面が上滑りしていくだけ…でもそれをわかっている…なぜ頭が働かないかを…どこかで。

 これが、僕の戸籍に記載されているということは…と、もう一方の勇敢な僕は回らない頭で現状を把握しようとした。つまり? 僕は実子と同じように記載されているだけの、血のつながらない…養子? ということは? つまり? 今の父と母…は……?

 他人…なんだ…



 想像していたよりも途方もないものが抜け落ちていった気がした。感情はなかった。感じなかったのか、無かったのか、それはわからなかった。まるで夢を見ている時のような浮遊感があった。

 放心の中で、このことを一番最初に言った人のことを、僕は遠い昔のことのように思い出していた。隆、あなたってすごいね。よくわかったね。僕、わからなかった。僕は自分以外は皆んな普通だって思ってた。僕が変だから両親が困ってるんだと思ってた。でもそうでもなかったよ、隆。あなたわかってたんだね。そんなに僕も僕の家もおかしかったんだ。見てわかるほど…僕達って…変だったんだ…

 (君の存在はフィクショナルだからね)

 寺岡さんの言葉が、虚ろな頭の中で幾重にも鳴り響いた。コミックだ…連載の…コミック…僕自身が…変なの。なんだ。辻褄だけ全部合ってるね。ただそれだけ。辻褄だけ。

 すると僕のがらんどうの中にいきなりある問いかけが降ってきた。僕はその問いかけに愕然とした。

 “いったい僕はどこから来たんだろう?”