そこにはこんなことが書いてあった。

・第817条の2

『家庭裁判所は、次条から第817条の7までに定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組(以下この款において「特別養子縁組」という。)を成立させることができる…』

 法律ありがちなめんどくさくて難しい言い回しで、読む前から読む気の萎える文章だった。だが斜めに読み進めるうちに、その中で『特別養子縁組』という言葉が目に止まった。

 特別養子縁組…?

 不意打ちを食らった時のように、一瞬頭の中がクラッとした。これはどういう意味だろう? 裁判となんの関係が? ザワザワする中でこの『特別養子縁組』をマウスでドラッグした。そしてそのままその文字列を検索に掛けた。一瞬のうちに検索のページが現れた。あまりにもすぐに現れたそのことに僕の思考がフッと止まった。それはまるで、目を開けたまま見ることをやめるような感じだった。

《特別養子縁組とは?ーNPO法人青い鳥の会》

『特別養子縁組(とくべつようしえんぐみ)とは児童福祉のための養子縁組の制度で、適切な環境に置かれない乳幼児が、別の家庭で養育を受けることを目的に設けられた。民法第817条の2に準拠している。 普通養子縁組の場合、戸籍上、養子は実親と養親の2…』

 検索のページのタイトルの下に見えた内容のリードを、僕は働かない頭でしばらく眺めていた。なんで僕はこんなものを見ているのだろうか、と、今日行った市役所のソファで思ったことを、もう一度反芻した。反芻しながら指はマウスのボタンに吸い付けられ、無抵抗のままタイトルをクリックしていた。それは自分の意志ともなんともつかない動きだった。誰の意志に関わらず、というようにサイトが目の前に広がった。