わかってはいたが、下の方は目を通してはいなかった。上半分を読んで事実確認ができたので、下の方に漢字と年月日が漫然と並んでいる行には興味がなく、特に見なかったからだ。特に大したことが書いてあるわけでもないようだった。今、その部分を改めて見ると、そこにはこんな単語が記載されていた。

 民法817条の2。

【民法817条の2による裁判確定日】平成**年2月18日 【届出日】平成**年2月24日 【届出人】父母 【送付を受けた日】平成**年3月1日 【受理者】**市長 【従前の戸籍】**県**市◎町△△番地

 …裁判?

 よく読んでみると、それはなにかよくわからない記述だった。届け出は僕の誕生日から4年後の年月日を示していた。なんの届け出かは全くわからない。その後になぜか自宅ではない住所地の市長と、従前の戸籍という自宅ではない場所の住所地の表示が並んでいた。誰の戸籍の住所なんだろう。届出人が父母、とあるので、父母のものなんだろうと思うがよくわからなかった。

 裁判というからには、なにか籍に関するものなのか、それとも戸籍には父母が起こした裁判の有無も記載されるのだろうか? この家に来る前の父母の住所地でなにかトラブルでもあったのかも知れない。だが戸籍に受けた(あるいは起こした)裁判の履歴を書く決まりなんかあるのかなぁ、と僕は考えた。それに4歳の時に僕は引っ越したという記憶はなかった。僕が覚えていないだけなんだろうか。

 ここの情報だけでは埒があかないことは明らかだった。明らかに情報が足りない。だがこれは単に民法817条の2を調べればいいことだ。法律の内容がわかればこの記載事項の意味は追々わかるだろう。僕はさっきまでSVOCを調べていた検索エンジンに、“民法817条の2”と打ち込み、エンターをポンと叩いた。一瞬で画面が検索の候補をずらずらと並べて僕に見せた。そしてその817条は検索のトップにそのままの文字で現れた。僕はその候補の文字列をクリックした。