「寺岡さん、バカじゃないんですか?」
「なにそれ!」
「だって僕、どれだけ寺岡さんに“小島さんのこと好きか嫌いかなんてわからない”って言ったと思います?」
「ああ、そうだねぇ。何度も言ったよねぇ。そ・れ・が・な・に・か?」
「だったら、これは恋とか愛とかそういうものじゃないってことぐらいわかりませんか?」
それを聞くと寺岡さんは間髪入れずに叫んだ。
「わっかるわけねーだろ!! どんだけお前らイチャイチャしてるって思ってんだよ! リア充氏ねよこの迷惑バカップルが!」
「はぁ? なんでそうなるんですか?」
「なんでかってか? それ説明させるのか私に? 胃に穴が空きそうですが?」
「親子ですよ?」
「親子みたいに見えるカップルなんかどんだけ居ると思ってんの?」
「みたいじゃなくて、親子ですよ?」
「だっからぁ! そんな愛情を感じてる恋人だって夫婦だって山ほどいるだろーが!」
「なんか違います。それは少なくとも小島さんと僕じゃない。それがわかってるからあのとき僕に小島さん認めたんじゃないですか。お前のお父さんなんだな…って。隆は恋人が欲しいんだ! 子供なんか欲しくないんだってば!」
「じゃあ、まだ君は気づいてないの? 自分のほんとの気持ちに気づいてないわけ?」
「気づいてるから言わなきゃって思ってずっと言いそびれてたんじゃないですか!」
「君の上っ面な無関心論のこと!? へぇぇぇ! それで本心だって思ってんの? マジで? 笑っちゃう」
「どこまで、人の気持ちを誤解してるんですか!」
「どこまでかなぁ!? 君は自分が死の世界の使いだから小島君のそばにいたらダメだとかマジで思ってるのも誤解かなぁ!?」
「わかってるじゃないですか!」
「ああああ! 腹立つわぁ! これで好きか嫌いか分かりませんだって? 大人ナメんなこのガキが!!」
「正確な理解に年齢は関係ありません」
「ホントにクソガキだな、君は」
自暴自棄な寺岡さんはどんどん口が悪くなっていった。まるで口喧嘩のようだった。僕は話の流れを変えた。



