「ダメだよ、自分で絞めちゃ。それでオナニーしながら死んじゃう事故って多いんだからね」
彼はそう言って僕の質問に答えた。後日、再び図書館で彼に誘われて彼の部屋に行く途中、僕はずっと考えていた“自分で自分を落とす”方法を彼に聞いたのだった。経験豊かな彼なら、きっと知っているに違いないと思ったが、回答は僕の期待を淡く裏切った。
「それに恥ずかしいでしょ…下半身裸とかで、自分の握って射精した窒息死体が家族とかに見つかるんだよ?」
「いや、死んでしまえば恥ずかしいかどうかなんて関係ないです」
「ま…そうだけどさ。でも、死んでも良いわけ?」
「どうでしょうか…」
僕はちょっと戸惑った。自分の熱の違和感を思った。それなら死を望んでもいいはずだと。今まで僕は鑑賞の対象に対して死を夢見ていた。でも自分の死を夢見たことがあっただろうか。僕の嗜好からしたら当然持っているはずの、自死への希求を自分ではっきりと意識したことがないことに気づいた。
いや、ある。
僕は彼に失神させられた瞬間のことを思い出した。“壊して欲しい”。そう、僕は願ったじゃないか。彼の前で「殺したいんでしょ?」と聞いた時も。では、僕の人生で自分の死を望んだのはつい最近のことなんだな…と僕は自分でそれが意外だった。なんでだろうか。僕はそのことを彼に言った。



