僕を止めてください 【小説】





「セックスしたいって思ったこと…ほんとは無いんだ…でも…こうしてるの気持ちいい…僕は包まれてる感じがする…僕はそれを知らない…知らなかった…でもきっと僕が普通に愛されてたら…」

 僕ははなにを言ってるんだ? 愛される? 誰から? 期待などしていない。そう、いつだって僕は無関心だった。あの人も、僕も、互いに…

「僕が…もし…あの人から普通に愛されていたなら…きっと…こんな感じなのかなって」
「あの人…ああ…あの人…な…」

 そう言うと隆はフッと笑った。

「やっぱり…俺、お父さんかよ…」
「ええ…たぶん…」
「俺は認めねぇよ」
「はい。知ってます」
「認めねぇ。でも俺も…知ってるよ」

 そう言って隆は、呆気なくそれを認めた。隆…わかってたんだ。それを聞いて僕は隆を見上げて言った。

「近親相姦はやめます。息子の親離れを祝って下さい」
「お前…言うよなぁ…」
「元々僕がこの発作が苦しくて隆に助けを求めたのが始まりなんだ。でも僕は二人のおかげで自分でどうにかしなきゃいけないって本気で今日思った。だから今日がそれの最後の日…僕には必要だったんだよ。寺岡さんが“完成する”って言ったの、僕にはどういうことかはっきりわかった…それにずっと…ずっと言わなくちゃって…ずっと思ってた…言わないでいるの…ずっと苦しかった…」
「苦しんでたのか…お前…」

 隆は驚いたように僕を見た。僕は僕で、苦しかった、と言った自分に驚いていた。