「ハッカとミントって…同じなんですか?」
「だいたい同じじゃないかな。日本産がハッカで、ミントは西洋種で、種類は同じだけど成分が微妙に違うみたいだけどね」

 僕は再び瓶からオイルを指に取った。

「痛くない? ものすごく刺激があると思うんだけど」
「そんなこと…言ってられませんでしたから。痛いですけど、それくらいじゃないと」
「でも今後は薄めたほうがいいんじゃないかな」
「でも、本当に匂い消えるんです。あんな強烈なのが。寺岡さんの言ってたこと…当たってるかも。」
「それは凄いなぁ…君の脳は特殊にカスタマイズされてるんだろうね。いま、どう? 身体まだ疼いてるの?」

 それはすぐには消えない。でも、保冷剤のせいか、いつもより冷静な気がした。

「ええ。でも…」

 ミントを鼻に塗る。鼻から息を吸った。今度はまあまあ匂った。更にだんだんと残り火が萎えていく感じがあった。これなら絞め落とされなくても元に戻れる…と、僕は初めてそんな希望的な気分になった。

「画像がなくなってからの熱が冷めるのが早い気がします」
「そりゃ良かった…いやぁ…まいった。正直まいったよ」

 そう言いながら寺岡さんがソファに寝っ転がった。冷静に分析してくれる人がいるというのも、僕の発作を緩和してくれる原因の1つなのかな、と僕は寺岡さんという観察者の効果を感じた。