寺岡さんは書斎に入ると、デスクの上から10インチ位のタブレット端末をつかみ、それを持って戻ってきた。
「ここに画像が入ってる。今何時?」
「2時5分前」
「いいね。始めようか。裕君、もしして欲しいことがあったら遠慮なく言いなよ。私でも小島くんにでも。わかった? ちゃんと言うんだよ?」
「はい。わかりました」
そう言いながら寺岡さんは窓のカーテンを引き始めた。その間に隆は僕から離れて長いソファの端に移動した。そのうちにアイボリーの生成りのカーテンが素通しのガラス窓をすべて覆った。寺岡さんは自分の席に帰ってくると、僕と隆の顔を交互に見て僕達に声を掛けた。
「じゃ、皆んな、がんばろうね」
「はい」
「おう」
なにかチームのような結束感がその一言で出たような気がした。寺岡さんがタブレットの電源を入れた。ディスプレイの上にアイコンがいくつかあった。画面を僕達に見せないように隠しながら、そのうちの1つを寺岡さんはタップした。
「いくよ、裕君だけ見て…」
全員に緊張が走った。隆が大きく息を吸う音が聞こえた。
「はい、これ」
そう言うと、寺岡さんが僕にタブレットの画面を向けた。
「あっ!」
僕は息を呑んだ。
どうしてこれが、ここに?
それはあの『Suicidium cadavere』の最初のページだった。



