僕を止めてください 【小説】




「ここにね…」

 と、寺岡さんがマウスを持ってクリックすると、『アスペルガー症候群・診断チェック』という題字が出てきた。

「これさ、元カレがご推薦のサイト。割と正確な診断出るって言うから…ヘタすると、レベルの低い医者に誤診されたりするよりこれのほうがいいこともあるって。もちろんちゃんとした専門医には及ばないらしいけど。やってみる? こういうのやったことある?」
「いえ、ないと思います。やってみます」

 第1問:一人で何かするより、誰かと一緒にするほうが好きだ。
 1. そうである
 2. どちらかといえばそうである
 3. どちらかといえばそうではない
 4. そうではない

 第2問:人の誕生日を覚えるのは苦手だ。
 ……
 全般に言えたことは“どうでもいい”という解答欄がなくてちょっと困ったことだった。

 50問は結構な設問量だったが、いつの間にか終わってた。最後の設問が終わると、自動チェックに移行した。すぐに診断結果が表示された。

「結果出ました」
「おお、おつかれ」

 僕の左右から二人が覗き込み、結果三人で頭を寄せ合って狭い画面の結果を確認し始めた。

『▼軽度の自閉傾向[41点]:アスペルガー症候群の診断値よりは低いが、成人の平均点数より高く、自閉の傾向が認められます。放置すると悪化の恐れがあるので、自閉専門の精神科や心療内科での診療を』

 隆が頷きながら言った。

「だろうな。納得だわ」
「41点かぁ。結構思ったより高得点だったね。私は12点だったけどね」
「寺岡、やってみたのか?」
「一応。面白いじゃん。小島君やってみる? 小島君はこれじゃなくてこの下の『うつ病』チェックだよね。やるとしたら」
「いやもういいからよ。診断出てるし」
「とりあえず、ここではアスペルガーの判定は出ないってわかったよね。これは最初に確認しときたかったんだ」

 そう言うと寺岡さんはパソコンをテーブルの下に置いた。