「でもそのお前をこんなに特殊にしたのは誰なんだろうな」
そう隆は意味深に僕に訊いた。だが、それは誰かのせいなんだろうか?
「誰って…僕でしょうね」
「そうかねぇ」
「だって、むしろそれを親は変えられなかったんじゃないですか…ね」
「まぁ、そう言えばそうなるけどな」
そう言うと、話題が途切れた。根拠のない話を続けるのもお互い不毛なような気がしたのだろう。
「ま、いいわ。じゃ、明日は10時にいつもの公園の脇に車停めて待ってるからよ」
「あ、はい。ありがとうございます」
「んじゃな、裕。おやすみ」
「おやすみなさい」
明日の会場は、寺岡さんのマンションだった。防音が良いらしい。それは大事だ。当然、隆の新しいマンションの部屋で自殺の画像は見てはいけない。それにあのハプニングバーではリラックス出来ないし、隆が画像から逃げる場所もないだろう、それに集中して分析するには向いてない、と寺岡さんは考えたらしい。
しかしなぜ寺岡さんは、僕のことにこんなに世話を焼いてくれるんだろう。それも口説きもしないで。それが寺岡さんの戦略かも知れないけれど、入院のことも含めて、ここまでしてくれる寺岡さんの気持ちがよくわからなかった。とはいえ、最初と比べて寺岡さんの印象は大きく変わったけれど、彼を好きか嫌いかなど、初めて会った日から今まで、意識したことは結局なかった。これからなにかそんな僕の気持ちが変わるんだろうか?
さあ、明日だ。佳彦。僕はあなたからどこまで離れたんだろうか? 最近、顔も忘れかけてきてる。僕が自分と呪いから自由になるために、明日なにが出来るんだろうか。



