僕を止めてください 【小説】





 翌日、翌々日、翌々日の翌日と、僕は自分の中で持て余したいくつもの疑問符を抱えているのに日を追う毎に疲れ始めていた。母親はあれから僕を無視ともなくさりげなく避けているみたいだったし、ゴールデンウィークは目前だった。例の会合の約束の前日になって、久しぶりに隆から当日の待ち合わせについての電話があった時、僕はその持て余してたものを目の前に広げてみせた。

「…っていうんです。変なんです」
「いやぁ、俺にはすごく納得できるぞ。お前が死んで生まれてきたって。そのまんまじゃねぇか」
「僕もです」
「じゃあ、それでいいんじゃねぇの?」
「なんか違うんです。母親はなんか隠してるし」
「隠してるって?」
「わかりません。でも変なんです」
「挙動不審ってやつか」
「まぁ、そうですね。そういうやつです」

 隆はふぅっとため息をついた。

「あのさ…ほんと失礼なこと言うけど」
「なんでしょうか?」
「あのお母さんは、お前のホントの母親か?」

 病院で母親と直接会った隆は、そこでまたそのことを言った。2度めだ。

「そう思いますけど」
「お前、戸籍謄本見たことあるか?」
「いえ…ないですね」
「ああ、そう」
「ほんとは入学の時に戸籍謄本も書類として送るはずだったんですが、僕が入院している間に母親が全部やってくれてたんです。まぁ、間に合わないからしてくれたんですが」
「見ておけよ…俺は…まぁ、いいや」
「なにかうちの母が言いましたか?」
「言わねぇよ。言わねぇけどさ。お前の母さんはお前に雰囲気似てねぇな。父親似か?」
「さあ、わかりません」
「ああ…興味ねぇよな、そんなこと」
「はい。そうです」
「お前が大事にされてんのはわかったぜ。放置はされてねぇなって思ったし」
「ええ、それは僕も思います」
「なんかな。母親とお前の距離感とかいうやつかな。なんか普通の親子と違うかなってさ」
「僕のせいですかね」
「ああ、お前のせいもあるわな」

 隆はちょっと笑った。