さて、僕はこの感覚のまま、例の会合に臨むんだろうかと考えた。この違和感が屍体の画像に吹き飛ばされるのか、それとも感覚を変質させているのか? 行く先に暗雲が垂れ込めてるのはわかっている。しかし、過去にもこんな得体の知れない闇があるんだとは。そしてその闇が、実は未来の暗雲をこっそり製造しているような気さえした。それは至極、正当性のある主張に思えた。
目が冴える。眠れそうにない。仕方なく起き上がって電気スタンドを点け、机の上のノートパソコンを立ち上げる。入学祝いに両親がくれた初めての自分のパソコン。今までは図書館のパソコンコーナーと学校でしか使えなかったが、ようやくこの春から自分の好きな時間に好きなことを調べられるようになった。台湾製だが、安くてもスペックはそれなりに高い。動画も画質が低ければ、サクサク動いた。
取り敢えず仮死分娩の新生児のその後を調べてみる。ネットで検索して、いろいろな質問箱に新生児仮死の予後について、そうなってしまった親から質問が寄せられている。後遺症が残る確率ははっきりわからなかった。だが特に問題なく多くの人が成長していた。仮死分娩される子供は全分娩の2%前後だそうだ。
『すくすくと育ってますよ〜。ご安心を!』
『最初は小さかったけど、今ではクラスでも大きい方です』
『友人は新生児仮死でしたが、優秀で研究者になりましたよ』etc…
質問者には色々なケースの回答が寄せられていた。その一方で眠ったまま起きない子も居た。そして、難産の原因不明は多くあるというから、嘘ではなかった。時計を見ると2時だった。そろそろ寝なくては。僕は目が冴えたままベッドに戻り、その5分後には寝ていた。



