僕を止めてください 【小説】




 風呂に入り歯を磨き、トイレに行きパジャマに着替えて、ベッドに入る。電気の消えた部屋で、仰向きで天井を見上げた。
 死んでた。僕。生まれつき死んでた。うん、そうだろうね。そうなんだ。

 で? それで?

 なにからなにまでしっくりこない感覚が、僕の前に立ち塞がっていた。それを聞いた時に、僕は自分のすべての謎が解けるかという盲目の期待をしていた。僕は仮死分娩だった。それを聞いた僕は、自分に雷が落ちるような突然の理解が降ってくると思っていた。佳彦が殺人の写真にしか欲情しなかったと知った時、いきなり叩きつけられた認めたくない真実に心の底から震えていた。あの姿を僕は忘れられない。僕はその震えを望んでいたのかも知れない。

 だが、そんなことは起きなかった。真実が降ってきたのに? それは僕がそれをとても良く知ってたから? 違うな。何かが違う。言葉では言えないようななにかが。

 あれは真実じゃないとしたら? いや、真実かも知れない。でも明らかに隠してるものをわかってるのに、それでなにを感じろっていうんだろう。大事なことを知ったような気はした。何かは起こったんだろう。でも違う。そうじゃない。そもそも出産時に仮死状態で生まれてくる子供なんか沢山いる。でもその子どもたちがみな、僕のようになるんだろうか?