僕を止めてください 【小説】





「いいでしょ? 実際どうなるか見たい。見て君がどう感じてるのか現場で知りたいな。なにがいい? いちばん好きなのは何?」
「…やっぱり観なきゃダメですか」
「うん」
「僕もう、暴走しても小島さん止められないですよ」
「だって、誰かに止めてもらうつもりなの? 今後さ」

 ああ。それを言われると確かにそうだった。目的を見失っていた。

「…ですよね。僕、自分のためにこれ克服しないとなんないんでした」
「ですよ。それには自分がなんでそうなるのか理解しなきゃ。だからお母さんに小さい頃のことよく聞いておいてね。この前私、君のお母さんと話したじゃない」
「あぁ、そうでしたね」
「お母さんは君のことすごく心配してた。身体のことだけじゃなくて。死にたいって言っちゃたんだって?」
「ええ…まあ」
「でも、心配の仕方が私は気にかかる」
「え…なぜでしょう?」
「言わなかったけどさ、お母さん。“ああ、やっぱりこうなっちゃった”って雰囲気が満載でさ。なにか思い当たることがあるって私は踏んでる。だから宿題は大事にしてね」

 寺岡さんは最後に気になることを言って、電話を切った。