「…で、そのあと小島君に病室で抱かれたの?」
「は?」
「だからぁ。カーテン閉めて制服のまま押し倒されて口もと手で塞がれて…下だけ剥かれて、されちゃった?」
「いいえ」
「ええええええぇ? なにそれ…小島君ホントにヘタレ…図体でかいのに」
「キス…だけです」
「あっそ。キスはしたんだ…まぁいっか。いや、良くないわ。そんな美味しいシチュエーションそんな無駄遣いするなんて、考えらんない! ホント考えらんない」
電話の向こうで寺岡さんはひとりで呆れて怒っていた。
「押し殺した声で耳元で“じっとしてろよ”とか囁こうよ! 挿れらんないならお互い咥えて何度も吐き出そうよ……で、裕君、キスで感じた?」
「なにをですか?」
「あーもーなにそれ。身体も心もビッと来たんでしょ? 君だけがボーダーもリミットも超えて彼を奮い立たせてんだよ?」
「いえ…安心しました」
「あれ?」
「小島さんちゃんと勃ってたし」
「勃ってんのにやんなかったの! しゃぶりもしなかったの! はぁぁ…今どきの若いもんはコレだからアルパカとか言われんだよ」
「アルパカ…」
いきなりアンデスの動物が出てきた。僕はどんな動物だったか記憶をたどっていたが、脳裏にはリャマしか出てこなくて、閉口した。



