僕を止めてください 【小説】





 面会の受付で用紙に記入して事務員さんに渡した。部屋が変わったらしく、隆は6人部屋から4人部屋に移っていた。前に僕と入っていた部屋の階ではなく、もう1階上だった。

 病棟の階段を昇りながら隆がどんな状態か想像していた。寺岡さんの言うように、あの持病が治ってしまっているのか、それともなにも変わらずにいるのか。僕に連絡がなかったことを考えると、会うのがためらわれているようにも思った。そんな不安を考えず、治療中の隆に勝手に来てしまっていいのかとも思ったが、僕以外に今の状況を確認できる人間はいないわけで、今後の治療もそれ抜きでやれるわけもないと考えなおした。

 長い廊下を歩く。部屋番号を探す。見つけた番号の下に、患者さんの名前がプレートで入っていた。小島隆。慣れ親しんだ名前なのに、こんなところに書いてあると別の人のように感じた。ドアは開いていた。一番奥の窓際が隆のベッドだった。カーテンが引いてあるので、居るかいないかはわからなかった。僕はベッドの間を縫って、窓の方に進んでいった。

 廊下側からは見えなかったが、窓の方のカーテンは開いていた。ベッドの中が見えた。隆が寝転がって、ぼんやりと窓の外を見ていた。僕はなんと言っていいのかわからずに、足元で隆を眺めていた。すると、ぼんやりしていた隆がいきなりこちらを見た。僕の姿に不意に気づいたようだった。隆は絶句したままびっくりしたように僕を凝視したまま固まっていた。