僕を止めてください 【小説】





「どういうことですか?」
「君が小島君のためになるように一生懸命考えてるからさ」
「そうなんですか」
「うん。気づいてない?」
「苦しまないで欲しいって思います」
「うんうん。いいよ。それって君は小島君のこと大事なんだよ。そうなると…好きとか嫌いとかなんて…どうでもいいのかな。それより深いかもな…愛だな、愛」
「愛…ですか」
「そうかもねって話。君にもわかんないんだろ? 想像してみるしかないじゃん。裕君は面白いな」

 寺岡さんは楽しそうに笑った。

「君も自分を確かめるといいよ。小島君には前もって言わないで、いきなり行ったほうがいい。逃げるかも知れないしね、今の彼なら。いやー、その会合見たいなぁ。どうなったか、あとで教えてよね」

 そのあと少しして僕達は話を終えた。話せてよかったよ、また話そうと言われたが、寺岡さんからは僕を狙っているとか言う雰囲気のカケラも匂っては来なかった。とても大人なんだなということをいつもよりも感じた。


 下車するバス停が近づき、誰かが降車ボタンを押した。病院の前に停車すると何人かがバス代を運転手の脇の支払い口に入れながら降りて行き、僕もそれに倣った。この白い建物の中に隆がいるのが不思議に思えた。